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大阪高等裁判所 平成10年(ネ)1077号 判決

東京都中央区京橋二丁目一一番五号 パインセントラルビル

控訴人(一審被告)

サカイ薬品株式会社

右代表者清算人

荒井良一

大阪市旭区赤川一丁目四番二五号

被控訴人(一審原告)

沢井製薬株式会社

右代表者代表取締役

澤井弘行

右訴訟代理人弁護士

新保克芳

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴人

原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。

被控訴人の請求を棄却する。

訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文と同旨

(以下の文中、控訴人を「被告」、被控訴人を「原告」という。)

第二  事案の概要

次に訂正するほか原判決「第二 事案の概要」(原判決三頁一行目から一一頁二行目まで)のとおりであるからこれを引用する。

原判決一〇頁七行目の「これらについては、いずれも」を「そのうち二社については」と改め、同八行目の「会社も原告と同様の」を「三社も原告とほぼ同様の」と改める。

第三  争点に関する当事者の主張

次に付加するほか原判決「第三 争点に関する当事者の主張」(原判決一一頁四行目から五七頁六行目まで)のとおりであるからこれを引用する。

(争点一について付加された主張)

【被告の主張】

本件特許は、別添特許公報の表示のとおりであり(平成四年三月一一日五年間の期間延長登録がなされている。)、同表示の特許請求の範囲1ないし3に記載の目的化合物の一般式において、R1は、R2はH、m及びnは1、pは0、〈省略〉は〈省略〉である場合の塩酸塩が塩酸アゼラスチンであり、その構造式は、別紙対照表記載の目的物質欄記載のとおりである。

被告の供給したアゼラスチンの製法Bは、別紙対照表記載のとおり、化合物A(4-〔4-クロロベンジル〕-1-〔2H〕-フタラジノン)と化合物C(1-メチル-1-アザビシクロ〔3・2・0〕ヘプタンクロリド、化合物Cは化合物Bの塩酸塩に水酸化ナトリウムを作用させて得る。)を反応させてアゼラスチンを得る方法である。

特許請求の範囲第3項によってアゼラスチンを得る方法は、別紙対照表記載のとおり、化合物Aと化合物E(4-クロロ-N-メチルパーヒドロアゼピン)とを反応させる方法である。

製法Bと右特許方法とを対比すると化合物Aをともに使用するが、特許方法の他の原料化合物である化合物Eは、化合物Cとは全く異なるから別異の方法であることは明らかである。

したがって、製法Bは、本件特許発明の技術的範囲に属しないので、被告は、原告に対して損害賠償義務を負うこともない。

【原告の主張】

原告が被告の不法行為の前提として主張しているのは、製法Bが、仮処分手続当時において、製造販売の中止を余儀なくされるような方法であったことであり、製法Bが本件特許権を客観的に侵害することを前提とするものではなく、被告の右主張は主張自体失当である。

(争点二について付加された主張)

【被告の主張】

1 逸失利益の算定について

特許権仮処分事件において、債務者側が特許権の存続期間中は製造販売を中止するとの和解をなすことは一般的にあることではあるが、製造承認の取下げをし、特許権の存続期間経過後も製造販売をしないとの和解は極めて例外的であり、仮に、被告に不法行為が認められたとしても特許権の存続期間経過後の逸失利益との間に相当因果関係は認められない。

また、逸失利益の計算においては、被告が供給する原末価格をもとに逸失利益を算定すべきであり、後に採用することになった他社(深幸薬業)の安価な原末価格をもとに算定すべきではない。

2 解決金及び他社供給の原末を使用した製剤の廃棄損について

解決金の五〇〇万円という金額は、被告から原末の供給を受けて仮処分事件においてエーザイとの間で裁判上の和解をした他社の和解金と比べ高額であり、相当因果関係はない。

また、被告からの原末を使用した製剤ではなく、原告があえて他社の原末を購入し製剤化したものの廃棄損についてまで相当因果関係はない。

【原告の主張】

1 逸失利益の算定について

後発医薬品の製造販売の中止を内容とする訴訟上の和解で、製造承認の取下げを内容に盛り込むことは、この数年来普通に行われており、被告からアゼラスチン原末を購入していた他社のうち製造承認の取下げを内容とする和解を締結している社が存する。

2 解決金について

被告が、他の和解における解決金として例示するのは進化製薬の一五〇万円であるが、右進化製薬と原告との販売量の差を考慮すると、五〇〇万円は相当因果関係の範囲内である。

(当審において追加された主張-過失相殺)

【被告の主張】

原告が本件原末供給契約を締結したのは、前記(原判決三四頁八行目から四七頁四行目まで)のとおり、本件仮処分事件の自らの代理人である荒井弁護士らの製法Bで勝てるとの意見をも参照した上で、本件原末供給契約の各条項に示されている被告の権限と責任に委ねるとした原告自らの経営政策上の判断によるものであって、それによる損害の発生については原告にも過失が存したというべきであるから、仮に被告に不法行為が認められたとしても、損害の算定にあたっては、原告の過失割合を考慮して減額すべきである。

【原告の主張】

原告に被告の主張するような過失はなかった。

被告の言動には、故意に匹敵する重大な過失があり、原告の過失があると主張することは許されない。

第四  争点に対する判断

一  当裁判所も、原告の本訴請求を一億二〇四四万円の限度で認容すべきであると考える。その理由は、次に、付加、訂正するほか、原判決の「第四争点に対する判断」(原判決五七頁八行目から一二二頁一〇行目まで)のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決六二頁七行目の「三月一九日」を「三月二九日」と改める。

2  原判決六五頁一行目の「薬価基準が」を「薬価基準に」と改める。

3  原判決六九頁一〇行目の「従前のような」を「前記(二)のような」と改める。

4  原判決八一頁七行目の「これらについては、いずれも」を「そのうち二社については」と改め、同八行目の「免れた会社」を「免れた三社」と改める。

5  原判決八二頁末行の「経済性等の点で」から同八三頁一行目から二行目にかけて「製法Bで行けるとの確信をもっており」までを「製法Bでも本件特許権を侵害しないと考え」と改める。

6  原判決九〇頁一行目から二行目にかけて「いずれも」とあるのを「二社について」と改める。

7  原判決九一頁一〇行目の「以上のような」から同九二頁二行目「追い込んで、」までを「以上のような一連の行為によって、被告の製法が製法Aであると誤信させ、製法Bであることを秘匿したまま本件原末供給契約につきほぼ合意に導き、原告をして本件原末供給契約を締結せざるを得ない状況に至らせた時点で、本件仮処分事件における答弁書の写しを交付するという形で原末の製法が製法Bであることを開示した結果、」と改める。

8  原判決九三頁二行目の「よるものであって、」の次に「本件原末供給契約の締結が原告に不本意な結果をもたらしたとしても、それは原告の自己責任の範囲内の問題であって、」を加える。

9  原判決九七頁一行目の「直ちに」の前に「本件においては、」を加え、一〇〇頁六行目の「事情」を「さしせまった状況の中(いわば身動きのでき難い状況)」と改める。

10  原判決一〇二頁三行目の次に改行して、次の文を加える。

「また、被告は、平成七年四月一七日付の合意書により、本件原末供給契約関係から離脱したことを理由に、被告の責任も消滅したと主張するが、前記一1(八)、(九)のとおり、それ以前の被告の言動が不法行為に該当し、右行為により、原告は、やむなくエーザイと和解をしたのであって、右合意書によって、被告の不法行為の成否が左右されるとは考えられない。原告は、本件原末供給契約に基づく契約上の責任を求めているわけでもなく、本件原末供給契約を合意解除したことを理由に被告の責任が消滅するものでもない。

右被告の主張は理由がない。」

11  原判決一〇二頁五行目の「追い込んで」を「至らせて」と、一〇六頁一〇行目の「を迫った」を「に至らせた」と各改める。

12  原判決一一一頁九行目の「被告の供給した」から次頁五行目末尾までを次のとおり改める。

「仮に、被告の供給したアゼラスチン原末の製法である製法Bが本件特許発明の技術的範囲に属しないとしても、エーザイが、被告からアゼラスチン原末の供給を受けていた原告以外の製薬会社五社に対してその製剤の製造販売の差止を申し立てた仮処分事件について、その後、うち二社に対して仮処分命令が発令され、他の三社についても、結局、原告とほぼ同様の内容で和解していること、一方、他の製造方法を採用していた深幸薬業からアゼラスチン原末の供給を受けていた他の製薬会社に対するエーザイの別件仮処分申立は却下されていること(甲九)に照らすと、当時の状況としては、製法Bによるアゼラスチン原末を使用している限り、本案訴訟においても差止が認められる可能性が極めて高いと判断され、やむなくエーザイの希望する内容に沿った和解に応じざるを得ない状況にあったことが認められる。そして、そのように至った経緯については、既に認定したとおり、被告が、原告に対し、真実の製法が製法Bであるのに、これを秘し、あたかも製法Aで製造するかのように行動して、本件原末供給契約締結に至らしめたことにある。そうすると、被告は、当審において、製法Bが本件特許発明の技術的範囲に属しない旨の主張をするが、右主張は、被告の不法行為の成否には影響がないというべきである。

なお、原告は、製法Aについては、本件特許発明とは原料化合物及び処理手段を異にし、均等方法、迂回方法とされるおそれもないという評価書(甲一)や鑑定書(甲二の1、2)を事前に受け取り、これを検討し、本件特許権を侵害するおそれがないという判断を有したうえで本件原末供給契約の締結手続を進めたものと考えられ、製法Aによるアゼラスチン原末の供給を受けておれば、エーザイの希望する内容の和解に応じることもなかったと認められる。契約締結の直前になって製法Bが開示されたからといって、その契約締結を進めた被告の責任は否定できない。」

13  原判決一一六頁六行目の「前記のとおり」を「前記一1(八)のとおり」と、同じく「同年四月二〇日」を「平成七年四月二〇日」と改める。

14  原判決一一七頁二行目から三行目までの「一八・五円」を「約一八・五円」と、同三行目の「一六円」を「約一六円」と、同四行目の「一三円」を「約一三円」と、同じく「一錠当たりの価格」を「一錠当たりの原料価格」と改める。

15  原判決一一八頁三行目の「本件口頭弁論終結」を「原審の口頭弁論終結」と改め、同一〇行目の「口頭弁論終結直後」の前に「原審の」を加える。

16  原判決一一九頁二行目の次に改行して次の文を加える。

「なお、被告は、原告の損害について次のとおり主張するが、いずれも理由がないというべきである。

(1) 被告は、特許権仮処分事件において、債務者側が、製造承認の取下げをし、特許権の存続期間経過後も製造販売をしないとの和解は極めて例外的であると主張するが、被告からアゼラスチン原末の供給を受けていた他社が、製造承認の取下げを含む和解に応じていることからすると、製造承認の取下げが右和解の条件としてやむを得なかったものであることが認められ、被告の不法行為と特許権の存続期間経過後の逸失利益との間にも相当因果関係を認めることができるというべきである。

また、被告は、逸失利益の計算においては、被告が供給する原末価格をもとに逸失利益を算定すべきであると主張するが、右価格は、アゼラスチン原末の製法が製法Aであるとの開示を受け、その開示が真実であることを前提とするものであり、実際には、その前提を欠くものであるから、右価格を逸失利益の算定の基礎とすることはできないというべきである(すなわち、当初から、製法Bであるとの開示を受けたことを仮定して算定すべきであり、その際、原告は、他の原末供給業者から他の製法による原末の供給を受けたと考えられるが、その価格は不明であるから、その後、現に深幸薬業から供給を受けた際の価格を基礎とすべきである。)。

なお、被告は、後発品の塩酸アゼラスチン製剤の販売価格について、その反証として報告書(乙一二)を提出するが、右報告書によると、平成八年一二月以前(特許権存続期間満了前)、エトラプチン錠1と同じアゼラスチン製剤の末端販売価格が平均一六円で、その後、一四円、一一円と値下がりしていることが認められる。しかし、右金額の八〇パーセントがメーカーの販売価格であるとは限らないし、後発品の販売価格がある程度類似したものであるとしても、その原料価格や製造価格などの要因によって、必ずしも同一であることを認めるに足る証拠はなく、乙一二のみでは、エトラプチン錠1の一錠当たりの販売価格についての前記認定を左右するには至らないというべきである。

また特許期間(平成九年一月二二日)経過後の逸失利益を算入することは誤りであるとするが、原告が、前記仮処分手続の中でやむなく前記和解に応じ、その結果右特許期間経過後も右薬剤の製造、販売をなしえなくなったもので、右和解の内容もやむを得なかったものというべく、原告が不必要な内容の和解をなしたものとはいえないから、右特許期間経過後の損害についても相当因果関係があるものと解せられる。

(2) 被告は、本件和解の解決金の五〇〇万円という金額は、被告から原末の供給を受けて仮処分事件においてエーザイとの間で裁判上の和解をした他社の和解金と比べ高額であり、相当因果関係はないと主張し、他に一五〇万円で和解した例が認められるが、右金額は、各社の販売量などにも大きく左右されるべきものであって、単純に比較することはできず、本件における相当因果関係の存在を左右するには至らないと考える。

また、被告は、被告からの原末を使用した製剤ではなく、原告があえて他社の原末を購入し製剤化したものの廃棄損についてまで相当因果関係はないと主張するが、エトラプチン錠1の製造承認の取下げ、製造販売の中止が和解の条件としてやむを得なかったことは前記(一)のとおりであり、そうすると、仮に製法B以外の製法により製造されたアゼラスチン原末を原料としたアゼラスチン製剤についても、廃棄することが当然の前提となり、右廃棄損も相当因果関係のある損害と認めるべきである。」

17  原判決一二〇頁四行目の「また、」の次に「前記一1(九)のとおり、」を加える。

18  原判決一二〇頁九行目から同一一行目にかけての「アゼラスチンの量、換言すれば・・残りの数量を認めるに」を「アゼラスチンの量(換言すれば・・残りの数量)を認めるに」と改める。

19  原判決一二一頁二行目から三行目にかけての「右期間に」の次に「おいても」を加え、同三行相の「販売され」を「販売されたとみることができ」と改め、同五行目の「価格にして」の前に「右原末の原料」を加える。

20  原判決一二二頁一行目の「エトラプチン錠1」の次に「に含まれる塩酸アゼラスチン」を加える。

二  当審において追加された主張(過失相殺)について

被告は、原告において、本件和解に至ったことについては原告の経営判断の誤りがあり、仮に被告に不法行為が成立するとしても、右判断の誤りを原告の過失として損害の算定にあたり考慮されるべきであると主張する。

しかし、前述(原判決八二頁三行目から九二頁八行目まで)したとおり、原告としては、本件和解を選択することがやむを得なかったというべきであり、原告の過失を認めることができないばかりか、被告において、製法Bであることを秘し、採用する予定のない製法Aを開示した行為は、故意にも匹敵する重大な過失があるというべきであり、原告の過失を損害の算定において考慮することは相当でないというべきである。

第五  結論

以上によれば、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないのでこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法六七条、六一条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小林茂雄 裁判官 小原卓雄 裁判官 山田陽三)

〈19〉日本国特許庁(JP) 〈11〉特許出願公告

〈12〉特許公報(B2) 昭55-31154

〈51〉Int.Cl.3C 07 D 401/04 401/06 403 04 403 06 451/02 453/02 /A 61 K 31/50 (C 07 D 401/04 237/00 211/00) (C 07 D 401/06 237/00 211/00) (C 07 D 403/04 237/00 223/00) (C 07 D 403/06 237/00 207/00) 識別記号 AEM 庁内整理番号 6670-4C 6670-4C 6670-4C 6670-4C 6736-4C 6736-4C 〈24〉〈44〉公告 昭和55年(1980)8月15日 発明の数 3

〈54〉塩基性置換ペンジルフタラゾン誘導体及びその酸付加塩の製造方法

〈21〉特願 昭47-8688

〈22〉出願 昭47(1972)1月22日

公開 昭47-16486

〈43〉昭47(1972)9月1日

優先権主張 〈32〉1971年1月22日〈33〉スイス(CH)

〈31〉1912/71

〈72〉発明者 デイートリツヒ・フオーゲルザング

ドイツ連邦共和国ヘルプブ4913レルヘンヴエーク11番

〈72〉発明者 ゲルハルト・シエフラー

ドイツ連邦共和国ゼネI4814ハウブトシユトラーセ56番

〈72〉発明者 ノルベルト・ブロツク

ドイツ連邦共和国ウエーレントルブ4801アムレハーゲン222番

〈72〉発明者 デイーテル・レンケ

ドイツ連邦共和国ビーレフエルト4800イエレンベツカーシユトラーセ117番

〈71〉出願人 アスターヴエルケ・アクチーエンゲゼルシヤフト・ヘミツシエ・フアブリーク

ドイツ連邦共和国ブラツクヴエーデ/ヴエストフアーレン4812ビーレフエルデルシユトラーセ79-91

〈74〉代理人 弁理士 山下白 外1名

〈57〉特許請求の範囲

1式

〈省略〉

で表わされる化合物又はその反応性誘導体を式

〈省略〉

で表わされるヒドラジン化合物と反応させ、そして、所望により得られろベンジルフタラゾン誘導体を生理学的に許容し得る酸付加塩に変えるか又は得られるベンジルフタラゾン誘導体の塩を遊離の塩基に変え、そして所望により、得られるラセミ混合物を光学的に活性な対掌体に分割することを特徴とする、式

〈省略〉

(式中、R1及ひR2は同一又は異なつて、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル、低級アルコキシ、ヒドロキシ、トリフルオロメチル又は置換もしくは非置換のアミノ基を表わし、Ⅹは式-CH2-、-CH2CH2-又は〈省略〉で表わされるアルキレン基であり、m及びnは同じであつても相異なつていてもよく、1又は2であり、。は0又は1であり、そして基〈省略〉はその窒素原子C1~4アルキルー置換されうるピロリジニル、ピペリジル又はパーヒドロアゼビニル基であるか、あるいはキヌクリジニル又はトロパニル基であるが、ただしキヌクリジニル又はトロパニル基は上記フタラジノンの2-窒素原子にキヌクリジニル又はトロパニル基の環炭素原子を介して直接結合しそしてその他の基はフタラジノンの2-窒素原子に直接か又は式-CH2-、-CH2CH2-又は〈省略〉のアルキレン基を介して結合する)で表わされる塩基性置換ベンジルフタラゾン誘導体及びその生理学的に許容しうる酸付加塩の製造方法。

2 式

〈省略〉

(式中、R1、R2、X、m、nおよひpは後記の意味を有し、基〈省略〉はその窒素原子が水素により置換されているピロリジニル、ピペリジルまたはバーヒドロアゼビニル基である)

で表わされる化合物をアルキル化剤と反応させ、そして、所望により得られるベンジルフタラゾン誘導体を生理学的に許容し得る酸付加塩に変えるか又は得られるベンジルフタラゾン誘導体の塩を遊離の塩基に変え、そして所望により、得られるラセミ混合物を光学的に活性な対掌体に分割することを特徴とする、式

〈省略〉

(式中、R1及びR2は同一又は異なつて、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル、低級アルコキシ、ヒドロキシ、トリフルオロメチル又は置換もしくは非置換のアミノ基を表わし、Ⅹは式-CH2-、-CH2CH2-又は〈省略〉で表わされるアルキレン基であり、mおよびnは同じであつても相異なつていてもよく、1又は2であり、pは0又は1であり、そして基〈省略〉はその窒素原子がC1~4アルキルー置換されたピロリジニル、ピペジル又はバーヒドロアゼビニル基である)

で表わされる塩基性置換ベンジルフタラゾン誘導体及びその生理学的に許容しうる酸付加塩の製造方法。

3 式

〈省略〉

で表わされる化合物を式

〈省略〉

(式中Qはアミド窒素原子の置換の際に脱離される原子又は基を表わす)

の化合物と反応させ、そして、所望により得られるベンジルフタラゾン誘導体を生理学的に許容し得る酸付加塩に変えるか又は得られるベンジルフタラゾン誘導体の塩を遊離の塩基に変え、そして所望により、得られるラセミ混合物を光学的に活性な対掌体に分割することを特徴とする、式

〈省略〉

(式中、R1及びR2は異なつて、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル、低級アルコキシ、ヒドロキシ、トリフルオロメチル又は置換もしくは非置換のアミノ基を表わし、Ⅹは式-CH2-、-CH2CH2-又は〈省略〉で表わされるアルキレン基であり、m及びnは同じであつても相異なつていてもよく、1又は2であり、pは0又は1であり、そして基〈省略〉はその窒素原子がC1~4アルキルー置換されうるピロリジニル、ピペリジル又はバーヒドロアゼビニル基であるか、あるいはキヌクリジニル又はトロパニル基であるが、ただしキヌクリジニル又はとロパニル基は上記フタラジノンの2-窒素原子にキヌクリジニル又はトロパニル基の環炭素原子を介して直接結合しそしてその他の基はフタラジノンの2-窒素原子に直接か又は式-CH2-、-CH2CH2-又は〈省略〉のアルキレン基を介して結合する)

で表わされる塩基性置換ベンジルフタラゾン誘導体及びその生理学的に許容しうる酸付加塩の製造方法。

発明の詳細な説明

本発明は、高い抗ヒスタミン作用を有する新しい塩基性置換ベンジルフタラゾン誘導体及びその生理学上許容し得る酸付加塩の製造方法に関する。

本発明方法により得られる新しいベンジルフタラゾン誘導体は,環状塩基性残基がそのフタラゾン核の第2位にあるアミド性窒素原子と、該環状塩基性残基の炭素原子により直接又はアルキレン鎖を介して結合していることが特徴である。塩基性置換フタラゾン化合物は例えば独国特許第

1046625号明細書などにより既に知られている。これらフタラゾン化合物は、脂肪族アルキレン鎖上に置換された塩基性残基を有する化合物であり、この塩基性残基は二個のアルキル基により置換されているか又はアルキレン基により置換されて環状残基を形成している第3級アミンである。しかしながら、これらの環状塩基性残基はフタラゾン核のアミド性窒素原子とは該環状アミンの窒素原子によりアルキレン鎖を介して結合している。

本発明による塩基性置換ベンジルフタラゾン誘導体は式Ⅰ

〈省略〉

(式中、R1及びR2は同一又は異なつて、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル、低級アルコキシ、ヒドロキシ、トリフルオロメチル又は置換もしくは非置換のアミノ基を表わし、Ⅹは式-CH2-、-CH2CH2-又は〈省略〉で表わされるアルキレン基であり、m及びnは同じであつても相異なつてもよく、1又は2であり、pは0又は1であり、そして基〈省略〉はその窒素原子がC1~4アルキルー置換されうるピロリジニル、ピペリジル又はパーヒドロアゼビニル基であるか、あるいはキヌクリジニル又はトロパニル基であるが、ただしキヌクリジニル又はトロパニル基は上記フタラジノンの2-窒素原子にキヌクリジニル又はトロパニル基の環炭素原子を介して直接結合しそしてその他の基はフタラジノンの2-窒素原子に直接か又は式-CH2-、-CH2CH2-又は〈省略〉のアルキレン基を介して結合する)で表わされる。

式Ⅰの化合物及びその生理学上許容し得る酸付加塩のうちでも、式中のR1、及びR2が水素、ハロゲン、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、又はトリフルオロメチルであつてm及びnが1又は2であるものが特に有好な性質を有している点で好ましい。特に好ましいものはR1が前述の如き基を表わし、R2が水素原子である化合物である。

これらの化合物のうちでも、式中のXが

-CH2-であるか又は〈省略〉であるようなベンジルフタラゾン化合物及び塩類が好ましい。

この化合物群のうちでも、その外に〈省略〉基がその環状基内に4~7個の炭素原子を含有する化合物、特に該基がN-置換ピロリジニル、ピペリジル、パーヒドロアゼビニル、キヌクリジル、トロパニル及びスコピル基であつて、該トロパニル及びスコピル基はフタラゾンのアミド性窒素原子と直接該トロパニル又はスコピル基の環炭素原子を介して結合し、一方、前記ピロリジニル、ピペリジル、パーヒドロアゼビニル又はキヌクリジル残基はフタラゾンのアミド性窒素原子と直接に又はアルキレン鎖X(上記において好ましいものとしてあげたもの)を介して緒合しているような化合物である。

式Ⅰの化合物及びその生理学上許容し得る酸付加塩のうち、最も好ましい化合物群は式中のR1が水素、弗素、塩素又は臭素原子、又はメトキシ、エトキシ、メチル、ヒドロキシ又はトリフルオロメチル基であり、R2が水素原子であり、mが1又は2であり、pが0であり、そして〈省略〉が、N-メチルパーヒドロアゼビニル、トロパニル又はキヌクリジル基、特にN-メチルパーヒドロアゼビニル-(4)、トロパニル-(3)又はキヌクリジル-(3)基であるような化合物、なかんずく式中のR1がp-クロロ又はp-フルオロ原子であり、そして〈省略〉がN-メチルパ-ヒドロアゼビニル-(4)基である化合物からなる。すなわち、これらベンジルフタラゾン誘導体の結合ベンゼン環は非置換であり、前記パーヒドロアゼビニル、トロパニル又はキヌクリジル残基はフタラゾン核のアミド性窒素原子と直接結合している。

式Ⅰの新しい塩基性置換ベンジルフタラゾン誘導体及びその生理学上許容しうる酸付加塩の製造方法は、

(A) 式Ⅱ

(Ⅱ)

〈省略〉

(式中、R1、R2、m及びnは式Ⅰにおける定義を有する)で表わされる化合物又はその反応性誘導体を式Ⅲ

(Ⅲ)

〈省略〉

(式中、X、p及び〈省略〉は式Ⅰにおける定義を有する)で表わされるヒドラジン化合物と反応させるか。

(B)式

〈省略〉

(式中、R1、R2、X、m、nの及び`pは式Ⅰにおける定義を有し、基〈省略〉はその窒素原子が水素により置換されているピロリジニル、ビペリジルまたはパーヒドロアゼビニル基である)で表わされる化合物をアルキル化剤と反応させるか、又は

(C)式Ⅳ

(Ⅳ)

〈省略〉

(式中、R1、R2、mおよびnは式Ⅰにおける定義を有する)

で表わされる化合物を式Ⅴ

〈省略〉

(式中Qはアミド窒素原子の置換の際にその電子ダブレツトと共に開裂される原子又は基、例えばハロゲン原子、スルホン酸エステル基などを表わし、X、p及び〈省略〉は式Ⅰにおける定義を有する)で表わされる化合物と反応させ、そしてこのようにして得られるベンジルフタラゾン誘導体を所望により適当な酸を用いて生理学上許容しうる酸付加塩に変えるか又は得られるこれらベンジルフタラゾン誘導体の塩を遊離の塩基に変えることを特徴とする。

式Ⅱで表わされるカルボン酸の反応性誘導体の例としては、特に酸ハロゲニド、エステル又は無水物があげられる。前記ベンゼン-O-ケトカルボン酸又はそのハゲニド、エステル、又は無水物に代えて使用してもよい。式Ⅱで表わされる化合物の反応性誘導体その他の例としては、式Ⅹ

〈省略〉

又は式

〈省略〉

(上記式Ⅹ及びにおいて、R1、R2、m及びnは式Ⅰにおける定義を有し、Aは酸素原子であるか又はイミノ基であり、またR3はハロゲン、NH2、ArNH、OH、アルコキシ基などである)で表わされる不飽和又は飽和のフタライド化合物又はフタルイミジン化合物がある。このタイブの化合物の他の例としては、式

〈省略〉

(式中、R1、R2m及びnは式Ⅰにおける定義を有する)で表わされる化合物がある。これら化合物を式Ⅲで表わされる化合物との反応に付すと、式Ⅱで表わされるベンゼン-O-ケトカルボン酸の誘導体が得られる。

上記A方法は、通常の溶媒及び助剤の存在下又は不在下に約180℃までに高められた温度にて酸性pH~アルカリ性pHに亘るpH域にて行なわれる。

有用な溶媒としては、例えば水、アルコール類、ジメチルホルムアミド、ジオキサン、ビリジン、トリエチルアミン、炭化水素類などがある。有用な助剤としては、かかる反応に慣用される塩基類、酸類及び縮合剤などがある。

前記Bの方法は、通常のアルキル化剤例えばギ酸、NaBH4、水素などの還元剤の存在下のホルムアルデヒド、並びにジメチルサルフエートとK2CO3、アルキルハロゲニド類、ジアゾメタンなどを用いて行なわれる。

式Ⅴで表わされるアルキル化剤との反応を行なう場合には、既知のサイクルアンモニウム転位(cyclammonium rearrangement)が生起し、環の大きさが変わる場合がある。

式Ⅰの化合物及びその酸付加塩は大部分フタラゾン核のアミド性窒素原子に、直接又はアルキレン基を介して連絡する環状塩基性基の炭素原子について光学的に活性である。そのラセミ体は、自体既知の方法で光学対掌体に分割してもよい。

本発明による化合物には、ヒスタミン分解作用がある。本化合物の特徴は非経口的、及び就中経口的適用において極めて高活性を有することである。更に、本化合物はこの高活性を長時間に亘つて生じる。この活性はモルモツトにおけるビスタミンエアロゾール試験又は人間における障害(この障害はヒスタミン又はヒスタミン放出体によりひきおこされる)試験(Quaddel-Test)において示すこともできる。

モルモツトにおいて、ヒスタミン分解作用をヒスタミンエアロゾール試験により試験した。各々体重300~700gのバーブライト(Pirbright)系モルモツトを試験した。これら動物にヒスタミンジハイドロクロリドの水性溶液のエアロゾール(濃度4mg/ml)を吸入させる。未処理動物においては、この吸入により2分以内に重篤な呼吸困難(重篤な呼吸短縮、横転)が生じる。ヒスタミン分解活性を測定するために供試化合物を8~10匹の群に皮下又は経口投与する。次に、それら供試動物を種々の時間に亘り前記ヒスタミンエアロゾールを用いて処理する。それら供試動物が重篤な呼吸困難(横転)を示すことなく10分間のエアロゾール吸入に耐えた場合にそれらは保護されたものとされる。

試験結果の評価のため、投薬量対数と保護頻度との間の関係からプロピツト分析により平均有効投薬量(DE50mg/kg)を決定する。

化学構造上本発明化合物に類似し、したがつて比較試験として用いた化合物は、4-ベノジル-2-(2-ジメチルアミノエチル)-1-(2H)-フタラジノン(商品名、Ahanon、独国特許第1046625号明細書参照、表Ⅰ及びⅡの化合物A)、及び高活性のヒスタミン分解剤として知られるβ-ジメチルアミノエチル-(4-クロロ-α-メチル-ベンズヒドリル)-エーテル(一般名クロロフエノキサミン、アルツナイミツテルホルシユング4巻、189頁(1954)、アルツナイミツテルホルシユング4巻、262頁(1954)参照、表Ⅰ及びⅡの化合物B)である。

本発明による生成物と、比較用生成物であるA及びBとの間の差異は供試化合物を供試動物に経口投与し、そして供試動物を8時間後にヒスタミンエアロゾール処理した場合に特に明暸である。0.0215mg/kgの4-(p-フルオロベンジル)-2-〔N-メチルパーヒドロアゼビニル-(4)〕-1-(2H)-フタラジノン又は0.215mg/kgの4-(p-クロロベンジル)-2-〔N-メチルーパーヒドロアゼビニル-(4)〕-1-(2H)-フタラジノン又は4-(p-クロロベンジル)-2-〔キヌクワジル-(3)〕-1-(2H)-フタラジノンを適用した場合には各群8~10匹のうち、1匹としてヒスタミンエアロゾール処理後呼吸困難及び横転を示さなかつた。これとは極めて対照的に両比較用化合物をその投薬量の10~100倍投与した場合(2.15mg/kg)、化合物Aの場合は10匹中9匹、また化合物Bの場合は10匹中10匹が依然、極めて重篤な呼吸困難及び横転を示した。

表Ⅰ:ヒスタミンエアロゾール試験によるヒスタミン分解的活性(モルモツト)(エアロゾール処理の1時間前に供試化合物を皮下投与)

〈省略〉

表Ⅱ:ヒスタミンェアロゾール試験によるヒスタミン分解的活性(エアロゾール処理の2及び8時間前に供試化合物を経口投与)

〈省略〉

本発明による化合物のヒスタミン分解作用は、比較用供試化合物A及びBのそれよりも実質的に高い。皮下投与の場合にはその相対的活性は比較用供試化合物のそれよりも約17.7倍高い(実施例番号3参照)。その活性は経口投与の場合に特に明らかである(表Ⅱ参照)。その活性は供試化合物Aの活性に比べて2時間試験においては16~310倍高く、また8時間試験においては13~582倍高い。この8時間試験は、本発明方法による化合物が極めて高い経口活性を有し、しかも該活性が長時間に亘つて生ずることを明瞭に実証している。

本発明による化合物は薬用製剤中の活性成分として用いられ、また通常の形態例えば錠剤、糖衣錠、カバセル剤、座薬、点滴薬、軟膏、クリーム及び注射薬などとして投与することもできる。本化合物は特に種々の形のアレルギーの処置に用いられる。すなわち、本化合物は人の気管支せんそくの処置、皮膚及び粘膜の疾患例えばじんましん、クインケ浮腫(Quincke's edema)、掻痒症、湿疹、枯草熱(花粉症)、血管運動神経性鼻炎などの処置に有効に用いられる。一般に本化合物はかかる治療においては患者1人当り、1日当り0.4~4mgの投薬量で投与される。前記アレルギー性疾患の症状は一回投与の場合24時間までの間有効に軽減することもできる。他の抗ヒスタミン薬に比べて極めて迅速にかつ長時間に亘つて生じる人間に対する本発明化合物の効果はヒスタミン放出体〔Med.Welt.17NF、2794(1966)参照〕により人工的に生ぜしめた障害の大きさの軽減において特に良好に示すこともできる。本発明による化合物はそのまま用いてもあるいは抗ヒスタミン製剤に慣用される他の活性成分と組合わせて用いてもよい。この点に関しては、それらの最少投薬量が極めて有益である。次に実施例をあげて本発明をさらに説明する。最終生成物の構造は元素分析及び赤外及びNMRスペクトルにより確認した。

実施例 1、

4-ペンジル-2-〔N-メチルピロリジニル-(3)-ノチル〕-1-(2H)-フタラジノン10.3gのフエニルアセトフエノン-o-カルボン酸及び61gのヒドラジンサルフエートを、水100cc中にNaOH3.6gを溶解した溶液に溶解する。その溶液を2時間加熱沸謄する。沈澱を吸引過し、水洗し、乾燥する。このようにして得られる9.2gの4-ペンジル-1-(2H)-フタラジノンを、無水アルコール250ccに金属カリウム1.4gを溶解した溶液に添加する。得られる混合物を30分加熱沸謄する。そのアルコールを留去する。10.6gのカリウム塩が得られる。

ジメチルホルムアミド100cc中の3-ヒドロキシメチル-N-メチルビロリジンのトシルエステル12.4g、及び4-ペンジル-1-(2H)-フタラジノンのナトリウム塩10.6gを100℃にて1時間加熱する。その溶媒を回転蒸発器内で分離しその残留物を水で磨砕する。その不溶物をエーテルに溶解し、そのエーテル性溶液を希塩酸抽出する。その酸性抽出液を水性水酸化カリウム溶液添加によりアルカリ性にする。その分離した油状生成物をエーテルに溶解し、そのエーテル性溶液を無水Na2SO4上で乾燥する。そのエーテルを蒸発すると11gの塩基が得られる。そのフマレートは一水和物として晶析する。融点

129~132℃。

実施例 2

4-ペノジル-2-(2-〔N-メチルピペリジル-(2)〕-エチル)-1-(2H)-フタラジノン

133gのフエニルアセトフエノン-o-カルボン酸及び7.9gのヒドラジンサルフエートを水150cc中の4.7gのNaOHと共に加熱する。実施例1に記載した如く11.9gの4-ベンジル-1-(2H)-フタラジノンを回収する。この化合物を実施例1に記載した如くに無水アルコール300ccに1.9gの金属カリウムを溶解した溶液との反応に付し、4-ベンジル-1-(2H)-フタラジノンのカリウム塩13.7gを得る。

ジメチルホルムアミド25cc中に8.9gの-(2-クロロエチル)-N-ノチルピペリジンを溶解した溶液を、ジノチルホルムアミド150cc中に4-ベンジル-1-(2H)-フタラジノンのカリウム塩137gを溶解した溶液に100℃にて滴加する。得られる溶液を2時間さらに撹拌する。その溶媒を留去し、残留物を水処理する。不溶性生成物をエーテルに溶解し、そのエーテル性溶液を希塩酸抽出し、その酸性抽出液を冷却しつつ水性水酸化カリウムを添加することによりアルカリ性にする。分離する油を再度エーテルに溶解し、そのエーテル性溶液を無水Na2SO4上で乾燥する。エーテル性塩酸を滴加することにより4-ペノジル-2-(2-〔N-メチルピペリジル-(2)〕-エチル)-1-(2H)-フタラジノンの塩酸塩が沈澱する。すなわち14gの該塩酸塩が得られる。再結晶後この塩酸塩は201~203℃にて融解する。

実施例1及び2に記載した如くに下記の化合物を製造した。

3. 4-(p-クロロベンジル)-2-〔N-メチルピロリジニル-(2)-メチル〕-1-(2H)-フタラジノン塩酸塩。融点206~207℃。

4. 4-(p-クロロベンジル)-2-〔N-メチルピペリジル-(2)-メチル〕-1-(2H)-フタラジノン硫酸塩水和物。融点90℃以上。

5. 4-ベンジル-2-〔N-メチルピペリジル-(3)-メチル〕-1-(2H)-フタラジノン塩酸塩水和物。融点77℃以上(分解)。

6. 4-(p-メチルペンジル)-2-〔N-メチルピロリジニル-(2)-メチル〕-1-(2H)-フタラジノン塩酸塩水和物。融点126~128℃。

7. 4-(p-メトキシベンジル)-2-〔N-メチルピロリジニル-(2)-メチル〕-1-(2H)-フタラジノン。融点111~114℃。

8. 4-(p-クロロペンジル)-2-(1-〔N-メチルピペリジル-(2)〕-エチル)-1-(2H)-フタラジノンクエノ酸塩。融点103~105℃。

実施例 9

4-ペンジル-2-〔N-メチルーパーヒドロアゼビニル-(4)〕-1-(2H)-フタラジノン

トルエン20cc中に8gの4-クロロ-N-メチルーパーヒドロアゼビンを溶解した溶液を無水トルエン250cc中の4-ペンジル-1-(2H)-フタラジノンのカリウム塩13.7gの懸濁液に40℃にて激しく撹拌しつつ滴加する。加熱を徐徐に続けて沸謄させた後、もう5時間還流を続ける。その溶媒を回転蒸発器内で分離し、その残留物を水洗する。不溶性油状生成物をエーテルに溶かし、そのエーテル性溶液を希塩酸抽出する。その酸性抽出液を水性水酸化カリウムの添加によりアルカリ性にし、分離する油を再度エーテルに溶かす。そのエーテル性溶液を無水Na2SO4上で乾燥する。溶媒を蒸発させると32gの粗製生成物が得られる。この生成物をそのフマール酸塩して再結晶すると4-ペンジル-2-〔N-メチルーパーヒドロアゼビニル-(4)〕-1-(2H)-フタラジノンのフマ-ル酸塩水和物が得られる。融点156~160℃。

更にその母液から4-ペンジル-2-(2-〔N-メチル-ピロリジニル-(2)〕エチル)-1-(2H)-フタラジノンを回収してもよい。

実施例 10.

4-(p-クロロペンジル)-1-〔N-ノチルーパーヒドロアゼビニル-(4)〕-1-(2H)-フタラジノン

30.6gのp-クロロペンジルアセトフエノン-o-カルボン酸及び16gのヒドラジンサルフエートを水25cc中のNaOH 9.48と共に加熱する。洗浄及び乾燥後4-(p-クロロペンジル)-1-(2H)-フタラジノン2.7gが得られる。

2-(2-クロロエチル)-N-メチルピロリジン塩酸塩20gを水20cc中にNaOH 4.4gを溶解した溶液に添加する。この溶液を70℃に加熱し、既に得た27gの4-(p-クロロペンジル)-1-(2H)-フタラジノンと40ccの50%ソーダライ(soda lye)との70℃に加熱された混合物に滴加する。その混合物をこの温度に保ち、さらに1時間加熱する。冷却及び水による希釈後不溶性物質を分離し、塩化メチレンに溶解する。その溶液を希塩酸抽出し、その酸性抽出液を水性水酸化カリウムの添加によりアルカリ性にする。分離した油を再度塩化メチレンに溶解し、その溶液を乾燥し、蒸発させる。粗製最終生成物が理論の90%を越える収率で得られる。それを塩に変え、再結晶により精製する。この4-(p-クロロペンジル)-2-〔N-メチルーパーヒドロアゼビニル-(4)〕-1-(2H)-フタラジノンの塩酸塩は225~229℃にて融解する。

液からは再結晶により4-(p-クロロペンジル)-2-(2-〔N-メチルピロリジニル-(2)〕-エチル)-1-(2H)-フタラジノンを回収することもできる。

実施例9及び10に記載した如くに下記の化合物を製造した。

11. 4-(p-メチルペンジル)-2-〔N-メチルーパーヒドロアゼビニル-(4)〕-1-(2H)-フタラジノン硫酸塩。融点199~203℃。

12. 4-(p-メトキシペンジル)-2-〔N-メチルーパーヒドロアゼビニル-(4)〕-1-(2H)-ブタラジノン硫酸塩。融点203~205℃。

13. 4-(3、4-ジメトキシペンジル)-2-〔N-メチルーパーヒドロアゼビニル-(4)〕-1-(2H)-フタラジノン硫酸塩。融点118~120℃。

14. 4-(2-クロロペンジル)-2-〔N-メチルーパーヒドロアゼビニル-(4)〕-1-(2H)-フタラジノン塩酸塩。融点198~200℃。

15. 4-(3-クロロペンジル)-2-〔N-メチルーパーヒドロアゼビニル-(4)〕-1-(2H)-フタラジノン。融点77~78℃。

16. 4-(p-クロロペンジル)-6、7-ジメトキシ-2-〔N-メチルーパーヒドロアゼビニル-(4)〕-1-(2H)-フタラジノン硫酸塩。融点286~290℃。

17. 4-(2、4-ジクロロペンジル)-2-〔N-メチルーパーヒドロアゼビニル-(4)〕-1-(2H)-フタラジノンフマール酸塩。融点207~211℃

18. 4-(p-ジメチルアミノペンジル)-2-〔N-メチルーパーヒドロアゼビニル-(4)〕-1-(2H)-フタラジノンフマール酸塩。融点177~182℃。

19. 4-(p-フルオロペンジル)-2-〔N-メチルーパーヒドロアゼビニル-(4)-1-(2H)-フタラジノン硫酸塩。融点211~220℃。

20. 4-(p-プロモペンジル)-2-〔N-メチルーパーヒードロアゼビニル-(4)〕-1-(2H)-フタラジノン硫酸塩。融点215~220℃。

21. 4-(p-アセトアミノペンジル)-2-〔N-メチルーパーヒドロアゼビニル-(4)〕-1-(2H)-フタラジノン塩酸塩水和物。融点275~278℃。

22. 4-(p-アミノペノジル)-2-〔N-メチルーパーヒドロアゼビニル-(4)〕-1-(2H)-フタラジノンジ塩酸塩水和物。融点270~277℃。

23. 4-(p-ヒドロキシペンジル)-2-〔N-メチルーパーヒドロアゼビニル-(4)〕-1-(2H)-フタラジノン塩酸塩水和物。融点260~266℃。

実施例 24.

4-(p-クロロペンジル)-2-〔キヌクリジル-(3)〕-1-(2H)-フタラジノン

p-クロロフエニルアセトフエノン-o-カルボン酸5.5gを30ccの2Nソーダライ及び30ccの水に溶解する。そこへ4.3gの3-キヌクリジルーヒドラジンジ塩酸塩を添加し、その混合物を窒素雰囲気下に3時間加熱沸謄させる。冷却すると極めて粘い赤色油が分離するが、これはスクラツチすると晶析する。その固体物質を過し、水洗し、再結晶する。44gの4-(p-クロロペンジル)-2-〔キヌクリジル-(3)〕-1-(2H)-フタラジノンが得られる。この生成物は181~182℃にて融解する。

実施例 25.

4-(p-クロロペンジル)-2-〔N-メチルピペリジル(4)〕-1-(2H)-フタラジノン

11gのp-クロロフエニルアセトフエノン-o-カルボン酸をエチルアルコール120ccに溶解する。そこへ8gのN-メチルピペリジル-(4)-ヒドラジンジ塩酸塩の溶液を添加し、その混合物を窒素雰囲気下に8時間加熱沸謄させる。そのアルコールを留去し、その残留物を希ソーダライ処理する。不溶性の油性生成物をクロロホルムに溶解し、そのクロロホルム溶液を洗浄、乾燥する。蒸発すると8.4gの前記フタラジノン塩基が得られる。そのフマール酸塩は191~193℃にて融解する。

実施例24及び25に記載した如くに下記の化合物を製造した。

26. 4-ペンジル-2-〔N-メチルピペリジル-(4)〕-1-(2H)-フタラジノン水和物。融点106~110℃。

27. 4-(p-クロロペンジル)-2-〔1、3-ジメテルーピペリジル-(4)〕-1-(2H)-フタラジノンフマール酸塩。融点219~221℃。

28. 4-(p-クロロペノジル)-2-〔トロバニル-(3)〕-7-(2H)-フタラジノン塩酸塩水和物。融点270-274℃。

29. 4-ペンジル-2-(2-〔N-メチルピロリジニル-(2)〕-エチル)-1-(2H)-フタラジノンフマール酸塩水和物。融点95~99℃。

30. 4-ペンジル-2-〔キヌクリジル-(3)〕-1-(2H)-フタラジノンフマール酸塩水和物。融点233~235℃。

31. 4-(p-クロロペンジル)-2-(2-〔N-メチルピロリジニル-(2)〕エチル)-1-(2H)-フタラジノン塩酸塩。融点220~224℃。

32. 4-(p-クロロペンジル)-2-〔N-メチルピロリジニル-(3)〕-1-(2H)-フタラジノン。融点117~120℃。

33. 4-(p-メトキシペンジル)-2-〔キヌクリジル-(3)〕-1-(2H)-フタラジノン塩酸塩。融点236~237℃。

34. 4-(p-フルオロペンジル)-2-〔N-メチルピロリジニル-(3)〕-1-(2H)-フタラジノン。融点90-93℃。

35. 4-(p-メチルペンジル)-2-〔N-メチルピロリジニル-(3)〕-1-(2H)-フタラジノン。融点96~98℃。

36. 4-(p-クロロペンジル)-2-〔ノルトロパニル-(3)〕-1-(2H)-フタラジノン塩酸塩。融点320℃。

37. 4-(p-クロロペンジル)-2-〔パーヒドロアゼビニル-(4)〕-1-(2H)-フタラジノンフマール酸塩。融点:分解。

実施例 38.

4-(p-クロロペンジル)-2-〔N-メチルーパーヒドロアゼビニル-(4)〕-1-(2H)-フタラジノン

1.0gの4-(p-クロロペンジル)-2-〔パーヒドロアゼビニル-(4)〕-1-(2H)-フタラジノンを10gの40%水性ホルムアルデヒド溶液及び11.6gのギ酸と共に5時間加熱する。この溶液を蒸発させ。その残留物を希ソーダライ処理する。不溶性物質をクロロホルムに溶かし、そのクロロホルム溶液を乾燥、蒸発させる。

その残留物をエーテルに溶かす。エーテル性塩酸を添加することにより0.8gの塩酸塩が沈澱する。アルコールから再結晶後その化合物は225~229℃にて融解する。

この化合物は実施例10により得られた最終生成物と同一である。

実施例38に記載した如くに下記の化合物を製造した。

39. 2-〔N-メチルーパーヒドロアゼビニル-(4)〕-4-(p-トリフルオロメチルペノジル)-1-(2H)-フタラジノン。

実施例 40.

4-(p-クロロペンジル)-2-〔N-メチルピペリジル-(3)〕-1-(2H)-フタラジノン

4.9gの3-〔4-(p-クロロペンジル)-1-オキソ-フタラジニル-(2)〕-1-メチルピリジニウム沃化物を、触媒としてのPO2の存在下80℃及び100気圧の水素圧にて7時間エチルアルコール300cc中の水素添加反応に付す。その触媒を過し、アルコールを留去する。残留物を希ソーダライ処理し、不溶性物質を塩化メチレンに溶かす。その塩化メチレン溶液を水洗し、カリ上で乾燥する。溶媒を留去し、固体残留物を60~70%エチルアルコールから再結晶る。収量は2.5gであり融点は154~156℃である。

実施例40に記載した如くに下記の化合物を製造した。

41. 4-(p-メテルペンジル)-2-〔N-メチルピペリジル-(3)〕-1-(2H)-フタラジノン。融点137~139℃。

42. 4-(p-メトキシペンジル)-2-〔N-メチルピペリジル-(3)〕-1-(2H)-フタラジノン。融点87~93℃。

〈省略〉

特許公報

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